騙しあい

騙しあい

砂 利道

(一次予選得点:16.2)

 無垢な狐の視点から社会を描いた作品です。丁寧に書き込まれており、纏まりもあります。ありがちなアイディアではありますが、読みやすい作品に仕上がっていると思います。 いくつか物語の構成に未整理な部分が有るようです。最後の部分の「人里近くで見つかった若狐の死体には」で、死体を見つけたのは誰なのでしょう。狐の仲間が見つけたのなら「残ったものはただの静寂である」とせっかく書いているのに無駄な気がします。「八兵衛は、懐から木の葉のお金を必死にかき出しながら叫んだ」は、ゼニについて詳しく知らない狐たちがお金で騙すのに不自然さを感じました。騙した狐だけは知っているという解釈もありますが、それにしても後半の状況を見る限り大した知識とは思えません。それを言い出すと「吉原」や「油揚げ」を知っているのも不自然なのではありますが。