僕たちの朝

僕たちの朝

紺詠志

(一次予選得点:17.9)

 かなり完成された作品だと感じました。ありがちなシチュエーションではあるものの、ロボットやアンドロイドものにありがちな空虚さの演出がないのが新鮮です。作品世界は新婚夫婦の日常のようで、のろけで満ち溢れています。古くからヨーロッパには「朝の歌」という音楽のジャンルがあるのですが、これは「愛を交わした朝のまどろみの中で別れを悲しむ」という歌です。この作品の描くものはそうした甘い生活です。穏やかで優しい筆致が、社会や規範とは無関係に自分の日常を生きている主人公の幸福感をうまく描き出しています。その底に空しさや悲しみを感じるのも、感じないのも読者に委ねられていると思います。