帰郷−明−

帰郷−明−

香沢智行

(一次予選得点:18.5)

 この作品は「帰郷−暗−」と一対をなした作品として読むべきだと思いますが、これ自体でも一応は完結しています。都会への不適応から、いつまでも郷里への思いを引きずっている主人公が、女への思いを引きずってそのまま離れられずに帰郷する。いかにも弱々しい、あるいは優しい物語です。
 「帰郷−暗−」は、自分の独占欲から彼女を連れて帰郷するのですが、この作品でもやはり彼女を連れて行くことになります。ついてくる女だったか、ついてこない女だったに過ぎません。主人公にとって「明」と「暗」の差は「どういう女と付き合うか」ということだということかもしれません。そこまで作者が意図しているかどうかは断言できないのですが、いかがでしょう。