追うもの、追いかけるもの

追うもの、追いかけるもの

京木 倫子

(一次予選得点:19.5)

 女性ならではの主題を扱った作品です。女性は同性から生み出されます。それを愛するのであれ嫌悪するのであれ互いは自分でもあります。これは心理というよりも感覚の世界に属するものであって、男性が描いたとて女性の共感は得られないように思います。「じっと手を見る」と対照的で面白く読みました。
 この作品はそうした主題を扱っています。しかしながら、その文体に理屈っぽさが見え隠れしているのが気になります。「克明に」とか「次に印象的だったのは」という表現は生硬で、自分の体から離れているように思われます。できるだけ具象的な素材を大和言葉で綴るべきです。「次に印象的だったのは」の方は無くても良いかもしれません。
 作品としては完結していますし、主題の絞り込みもしっかりされています。完成度の高い作品といえますが、読者としてはより長い作品(千字より長いもの)で、より掘り下げてみて欲しいと思ってしまいます。この公募とは関係なく、同じテーマでもう一作書いてみてはいかがでしょう。