泣きおんな

泣きおんな

の★

(一次予選得点:22.3)

 飼っていた犬を失った孤独に生きる主人公が、子供を失い身寄りのない泣きおんなと、感情を共有する物語です。悲しいから泣くのか、泣くから悲しいのかというのはよく言われることです。念仏や声明の例を引くまでもなく、人間は声を出していくことで自分を確認することが出来ます。
 この作品のポイントは読者をその感情に引き込むことが出来るかどうかだとおもいます。シロを供養する場面がもう少ししっかり書き込まれていたらと思います。特に女への憎悪が消えていく過程が曖昧です。取上げた素材の良さに寄りかかりすぎているように思えました。また主人公の年齢などの情報が伏せられているので、感情の移入が難しいようです。ここはあえて隠す必要はないでしょう。
 「急いで後を追って表へ出ると、血の色よりも赤い彼岸花が静かに秋風に揺れていた」は、どういう意図で書いたのか読取れませんでした。最後だけに引っ掛かりを感じて、どうもすっきりしません。
 細かな点では、たった五日で黒光りする位牌(漆塗りまたはそれに似せたもの)が出来ているのは不自然に思われます。それとも五日目に散骨をして、その後かなり経ってから泣き女が来た設定なのでしょうか。