朧月の夜に

朧月の夜に

灰猫

 丁寧な描写でうまく銀竜草が描かれています。銀竜草がなぜ美しいのかが読者に伝われば、この作品は成功と言えるでしょう。「あれは闇に深く沈んだ大地から、月へと昇ろうとするかの様に身を震わせていてなあ」は良いのですが、その後の文がもう一つ話し言葉としては単調で残念です。この段落の善し悪しが作品全体を規定するだけにもう少し書き込みが欲しいところです。
 自分の生き様と重ねあわせてみる部分は、やや説明が分かりにくいようです。主人公がカメラマンの言葉に何かを感じ取り、それをまた読者が感じ取るという構造上、分かりやすい言葉や、行動が示されている必要を感じます。
 雰囲気はでているので、後はいかに的確で純度の高い表現が出来るかだと思います。