強いく悲しい光

強いく悲しい光

ひな

 情景を重ねていくことで、内面を表現しようとする作品だと理解しました。お決まりのような熱帯の砂浜、訪れる驟雨。ドラマチックな情景が描かれていきます。文は現在形の短いものに揃えられていて、力強さがあります。ただ、一つ一つはともかく、全体を通してみると細かな矛盾や、語句の重なりがあり仕上げの丁寧さに欠ける印象があります。
 たとえば、冒頭の文の「物憂げにそして無気力にさせた」は曖昧に過ぎると思います。「物憂く無気力にさせた」で良いのではないでしょうか。「物憂げ」では本当は物憂く無いようにもとれます。また「藤の枕」は「籐の枕」の誤り。「風向きがかわった」から導き出される情景の中で「風がさざめきだす」とするのは視点が不安定な感じです。「ゴザ」をカタカナにする必要性もあまり感じません。「大粒の雨は地面の砂粒を弾き飛ばしトタン屋根を激しく打ち鳴らす」と叩きつけるような力強い雨を描きながら「雨粒は真横に吹きなぐる」とすぐに降りかたを変えてしまうのも残念に思います。情景が連続性を持たず、個々の文で終ってしまっていると感じました。