ロールプレイング・イン・東京

ロールプレイング・イン・東京

石井ナヲミ

(一次予選得点:16.3)

 この作品の終盤はどう解釈していいのか迷いました。「天狗の鼻というのは随分いやらしいなあ、などと愚にもつかぬ事を考えているうち眠りについた」から後を夢の出来事と考えれば説明はつくのですが、それでは味もそっけもないように思います。逆に、これ以前を幻影と考える方法もあります。
 かつてロールプレイングは、日常世界を架空の演劇空間で再構成するものでした。それが今となっては、ロールプレイの物語が日常世界へと侵食を始めています。大した理念も理想もなく活きている我々の日常は、心理の深層に踏み込みまた理想を追求しようとする演劇世界の物語に比べてあまりにひ弱です。性欲(ひいては生きる力:リビドー)を従えた物語の主人公が、われわれの日常を幻影として透かし見ながら冒険をすることが、正しい姿なのかもしれません。
 深読みし過ぎですね。(反省)