猫玉
一白
(一次予選得点:16.4)
手慣れた達者な文章で、うまく全体を構成しています。猫玉というアイディアも良いと思います。ありがちな作りではありますが、それが退屈でないのが上手さでしょう。
駅の方から歩いてきた男が何者なのか、最後まで説明はされていません。それを説明する必要がないからなのでしょう。男は主人公に安息を与えます。その代価として何かを得たのかもしれませんが、主人公にとっては関係のないことと言ってもよいのかもしれません。「小魚の干したものを少々いただく満足感」さえあれば、その他の面倒で苦痛な日常は必要ないというのは、古くて現代的な感慨でしょう。丁寧な表現で、その「気分」を的確に描いていることがこの作品を魅力的にしています。
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