向こうの生活
マロン
(一次予選得点:18.8)
空想の世界に逃避することを、内と外から描いた作品です。向こうの世界に行っているのが雄二だけなのか、その母親もなのかによって味わいの変わる作品だと思います。前者ですとありがちなショートストーリーですが、後者だとすればちょっと神秘的なあるいは哲学的な味が出てきます。
空想の世界に浸りきるということは、自分の生活は主観によってのみ作り出されるという信念に頼って、自分で再構成することです。それで幸せなら空想でも思い込みでも構わない。往々にしてそのレベルで作品が留まりがちなのですが、それを主人公は外界から見つめ、その上「父親違いの妹」との関係を気にします。これは個人の主観世界と客観世界は別のものでありながら、行き来が可能な関係を保っているという新たな解決法かもしれません。二元論的でない解釈を新しく感じました。
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