南国東京[ナンゴクトキヨ]
紺詠志
(一次予選得点:20)
完成度の高い作品です。異文化の接触という興味深い問題を、淡々とした文章で描いています。特に心情を表現する文はないのですが、全体としては読者の心情に働きかけるものに仕上がっています。「萌の朱雀」という映画がありましたが、ドキュメンタリフィルムを積み上げて物語を構成していく様な手法がこの作品と似ているように思われます。
ブジババの人たちの描きかたが、多少ステロタイプ(呪術的な未開民)に過ぎるようにも思われますが、われわれ日本人にとってはこういう社会が理想郷として捉えられている現実が有るように思います。十九世紀のヨーロッパでも、やはりアフリカや東洋の未開民(つまり私達ですが)と交流する物語が多く書かれました。
トーキョーになって久しい地に暮らす私達は、もうトキヨからきたサタウのように、ブジババに同化することができないと、最後の段落にうまく集約されています。
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