「同性愛−夏草−」

「同性愛−夏草−」

メトロ

(一次予選得点:14.9)

 いつものメトロ氏とは違って、登場人物が言葉少ななのが印象的です。同い年の薫と主人公が小高い丘の上でぽつりぽつりと話す。そこには相手の心を臆病に探る少年の気持ちが描かれています。大人になれない時代には、自分の未熟さへの思いが脅えを連れてきます。作品のシチュエーション自体にはこれといった新味や意外な展開はないので、描写にすべてがかかっていると言えるでしょう。
 最後に「薫が好きだ」と言えるのはかなり勇気があると思います。ここに持ってくる為にはよほどの描写を積み重ねなければならないでしょう。つい、象徴的に表現したくなるところです。あえてそう言い切る描写に、性急で真っ直ぐな少年の感性を描いているのでしょうか。