化性
灰猫
(一次予選得点:15)
メークアップという分野をミクロな視点から丁寧に描写した好作品です。
作者がたっぷりの思い入れでつけたであろう「化性」というタイトルは、今一つ活かされていないように思います。それは延いては主題が明確に伝わっていないということでもあります。化粧の描写をすることで、そこにモデルとの「性」的な内面の関わりが感じられないと、最後の部分が活きてきません。作品の中心は化粧の各段階をいかに緊迫感と迫真感をもって読者に提示できるかにかかっているでしょう。
作品が一人称で書かれているために、「客席と言う安全圏から内に踏み込んでしまっている彼らは、彼女の変貌に取り込まれている」「周りは役に憑いた彼女に驚愕し、ざわめく。役でない彼女が、有り難うと閉じた世界の続きであるかのように無言で語りかける。その圧倒感」といった描写の客観性が弱くなってしまっています。ここはいくら強い描写をしても効果がありません。一人称なりの書き方をするべきだと重います。
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