ストリートライフ

ストリートライフ

グリムゾン伯爵

(一次予選得点:15.8)

 作者に解釈せよと挑戦されているような印象を受けました。ううむ。
 シチュエーションが次々に羅列されていきます。劇的な状況の描写でよしとする作家にとっては、一行一行が小説一つになりそうな事ばかりです。「魔女の母親は、娘を救世主とあがめる」で百枚くらいは書けそうですよね。現実の世界が多くの人々の雑多で偏狭で愚鈍な認識の総体であるならば、まさにここに描かれたすべての物が、社会というものの真実なのかもしれません。
 最後に書かれた部分で、社会認識の断片を「いかにもな表現で粉飾して」読者に示す詩人の行為が、偽善的で空虚だと言っているように読めるのですが、それがこの作品自体を否定して見せているというからくりこそ作者の狙いなのかもしれません。