ゴッチ
鹿野 まどか
(一次予選得点:16.5)
意欲的な作品ですが、思わせぶりすぎるようにも思われます。また構成上、繰り返しになっている部分や、説明が分かりにくい部分もあり未整理な印象を受けました。個人的には好きな作品なのですが。
わたしが演劇青年だったせいでしょうか「ゴドーを待ちながら」(ベケット)という芝居を思い出してしまいました。二人の人間がただゴドーを待っているというお話です。ゴドーは最後まで現れませんし、ゴドーが何なのかは説明されません。この作品でもゴッチが何なのかは最後まで説明されません。ゴッチはいろいろ知っていますし、人間の行動にいろいろ批評を加えたり、好きだの嫌いだの言っています。文芸批評家のように、自らは評価の外に立ってただ人々の営みを見ているだけ。古典的な解釈を加えるならばゴッチはその音の示すように「神(GOD)」なのでしょう。ただ、現代という時代を見つめてみれば、我々自信もまさにオリュンポスの気侭で嫉妬深く奔放な神々のように生きているとも言えます。社会に対する関わり方はゴッチそのものかもしれません。
「ゴドーを待ちながら」は絶対的なものの崩壊した近代においてゴドーを待ち続ける物語だと思うのですが、「ゴッチ」は退屈な神に昇りつめてしまった私達の物語のようにも読めます。さて、作者の意図はどの辺りにあるのでしょうか。
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