ザリ課長ニューヨークへ行く
二十一性器リンゴ
(一次予選得点:16.8)
このシリーズはやはり分かりにくいですね。いつも誇り高いザリ課長は単なるザリガニの悲哀を味わいつつも、自分の人生をそれなりに楽しんでいるのだなあ、と思ったりはするのですが、それが作者の言いたいことかといえば違うように思います。なにより、言いたいことがあるのか、それとも部分部分で楽しめれば良い、いわゆる「物語」なのか判断に迷うところです。いつもなら、理解不能という一言で他の方に任せてしまうところですが、挑戦者ともなりますとそれなりに解析しなければならないのでしょうか。
この作品を読んでまず気になってくるのは「ニューヨーク」「アマゾン川」「マレーシア語」「インドネシアルピー」「神田」という言葉が単なる記号として使われていることです。それに対して「新宿」は現実感を帯びています。「成田」は中間でしょうか。こうしたイメージだけで実体の伴わない概念をフィルターにして、現実を眺めているような印象を受けます。現実的な描写でこの日のガリ課長を描くとまた生々しい生活があるのでしょうが、あえて観察者の内面からの描写(あるいは思念の揺らぎの描写)を試みているのでしょうか。
ギミックの散りばめられた作品世界は賑やかではありますが、あまりにこの作品は寡黙ではないでしょうか。皆さんの解釈を期待します。
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