水をまく

水をまく

こずみっく

 大変良質の素材を、料理し損ねた気がします。お話の筋立てはこれで良いと思うのですが、文章の構成と力点の置き方に難があるように思います。ストーリーや設定はセンスが良いと思えるだけに本当に残念です。全般に起伏が乏しく、最後の雨が降る場面でも感動や驚きが出てきません。例えば、沙耶伽の力を示すなら、どしゃ降りに降らしたってかまわないと思います。あるいは、雨によって一気に大地が甦る感覚を文章化することも良いでしょう。逆に沙耶伽の無邪気さを強調する為に、雨を受け止めるように両腕を広げてはしゃぐ姿を描く手もあります。
 こうした作品は、ストーリーをなぞるだけでなく、情景を活き活きと描ききることが作品の成否を決めるのではないでしょうか。