夏凧
おかみふみかつ
なかなかに危ない話です。東京電力の電子(でんこ)ちゃんの「電線の側で凧を揚げないでね」というCMを思い出してしまいました。お話自体は主人公が人生の途中で、父親の姿を思い出すという物語なのですが、男の子と父親の関係をうまく捉えていると思います。この父親はどちらかというと根性派のようで「フランクリンって外人さんはな、雷が落ちてきても手を放さなかったそうだ」とまるで木口小平のようなフランクリンを勝手に作り上げています。そんな父親の非論理的なようでも魅力的な生き方に主人公は励まされるのです。
表現面では以下の点が気になりました。「考えることは山ほどあるはずなのにと考えながら、電車は延岡を温泉郷に連れて行った」では、電車が考えてしまっています。「眼前の田圃の向こうの小高い丘の向こうの生い茂る森の向こうの鉄塔の側」は、意図的なのかもしれませんが読んでいて辛いです。情景を想像する身にもなっていただきたい。「丘の向こうの森」という表現だけでも想像しづらいというのに、長すぎます。「父親と延岡と延岡の心を舞い上がらせた」も分かったような分からないような表現です。素直に「父親と延岡の心を舞い上がらせた」でも良かったのではないでしょうか。
それから、ほんとに「電線の側では凧を揚げちゃ駄目だよ」。良い子の皆さんは分かりましたか。
|