命の選択

命の選択

Ring

 せっかくの素材が、活かしきれていないように思います。まず何より気になるのがタイトルです。「命の洗濯」という全く無関係な語と重なるタイトルをつける必要はありません。作者なりの考えもあるのかもしれませんが、その意図は伝わってきませんし、また作品の主題を鈍らせていると思います。また表現がこなれていないという印象を随所で受けました。「僕は吐き気をこらえずにはいられなかった」という表現は意味が全く不明です。「吐き気を催さずにはいられなかった」か「吐き気をこらえた」で充分です。重ねると違う意味になってしまいます。「彼をひとりの人間として人格的もので判断するのなら」もその意味するところが曖昧すぎます。指輪によって二人の関係と第三の人物の存在を見事に表現できているだけに、こうした詰めの甘さが残念でなりません。
 そのほか表現の面では、以下の点が気になりました。「ベット」は「ベッド」の誤り(ドイツ語だって言わないよね)。「心電図らしきものがピッ、ピッと音を立てながら、美しい放物線を描いていた」の心電図は美しい放物線を描かない。「僕自信の手で」は「僕自身の手で」の誤り。