ピアス

ピアス

有坂苳子

 良くも悪くも「軽く」仕上がった作品です。時間にして数分の物語を、あっさりと纏めています。その気になれば、ピアスをプレゼントした男の存在やら、僕の挫折の経験といった展開を付け足すことも出来るでしょうが、あえてそれをしないところにこの作品の味があるのだと思います。彼女がピアスをする気になった理由などは一切関係なく、主人公の観点だけで物語を進めています。
 文章も整理されていて、達者です。ただ「あまりにも変わっていなかったので、かえって逆にわからなかった」は少しくどく感じました。「かえって分からなかった」か「逆に分からなかった」で充分です。