過ぎてしまった11の季節と語れなかった言葉たち
内田 一
わざとではないと思うのですが、大変に読みづらい文章です。台詞や独白が誰のものなのか、俄かには分からないので、何度も後戻りして確認しなければなりません。これがTVドラマや映画なら声だけで判別できるのですが、小説だと苦しいようです。登場人物もはっきりとしないのですが、黒人の少年はケイの数年前で、白い肌の少女は弥生の数年前なのでしょうか。名前からすると、弥生は日系かもしれません。数年の月日の中で、ケイがメイに言えなかった言葉とそれでも伝わる心情を描いているようにもとれます。
全体に説明が不足していて、読者にかなりの苦労を強いる作品になっています。「写真のようにもわりとした雲があり、僅かに風に逆らい、たなびく」という情景は分かりづらく思います。「わずかに風に逆らい」ながらも流されて「たなびく」のでしょうか。「もわり」と「たなびく」もそぐわない感じです。「朝はまだで、朝は今日だった」二つ目の「朝」は「あした」と読ませたいのかもしれませんが、決して分かりやすい表現ではありません。
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