業火

業火

もずのすけ

(一次予選得点:99)

 「なにもしないことの罪」が取上げられています。ただそれだけかとも思ったのですが、獄卒の「おっと、余計な考えを起こさぬようにな。あの男と同じ羽目になるぞ」という言葉からすると、無力であることに気づくことの方を問題にしているようです。無駄なことでも努力し続けることを閻魔大王は好むようです。最後の一文では、その王にも「疲れの色が見えた」と無力感の罠が表現されています。こういった認識自体は良いと思うのですが、この作品が悪あがきを推奨しているのか、否定しているのかスタンスが今一つはっきりしません。作者の考えが明瞭に示されていないのは、どうもすっきりしません。「はっきりと言わないことの罪」を私は感じるのですが。