崩壊
秋丸
この作品は「夾竹桃」をどう捉えるかが重要なように思います。しかし、その部分への言及がやや少なくはないでしょうか。私達が夾竹桃に抱くイメージは、その「毒性」についてでしょう。強心剤にも使われるこの花は、当然のことながら毒草でもあります。自らを力づけるとともに蝕んでいく花という印象です。もう一つのイメージは原爆との関わりです。この花の時期に原爆が投下されまた終戦を迎えたため、そのイメージがある年輩の人には行き渡っています。広島の平和記念公園に植えられた赤い夾竹桃を思い出す人も多いでしょう。内容から考えれば後者の印象もあり、そう思って読めばそれなりに情景描写も説明がつくのですが、そうだと言い切る自信はありません。
私にとっては、この作品は説明不足のように思われました。イメージ先行で主張をあえて隠しているように思えます。もったいつけるのも技法ですが、それでなお読取れる作品であるべきだと考えます。また最後の文章は「みみず」(takka氏)をなぞったような印象があり、残念でした。
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