氷の星に飛ぶ君へ

氷の星に飛ぶ君へ

蛮人S

(一次予選得点:14.5)

 タイタンにする必要性があったかといえば、別に南極でもアマゾンでもいいように思えるのですが、とりあえずタイタンに赴任していく男を見送るお話です。タイタンは原始地球に似た厚い大気を持つ衛星ですから、確かに宇宙生物学研究のためには有用かもしれません。外惑星便で多額の費用を払って研究所についていけるのですから、助手である主人公も優秀な研究者なのかもしれません。男の研究への情熱と主人公の心理が乖離しているというところが、この作品のシチュエーションなのでしょうが、主人公がどういう姿勢で学問に取り組んでいるのかが分かりかねる処もあります。彼の助手でいることが、研究より比重が大きかったのでしょうか。主人公は恋人と研究の双方を失うことになるのですが、それよりも平穏で優しさに満ちた生活を望んでいるのでしょう。なかなか、微妙な部分をうまく描き込んでいます。
 描写については、SF的な舞台をそつなくこなしているのですが、その舞台を活かせているかには疑問が残ります。