筆箱
黒木りえ
(一次予選得点:29.5)
主人公とお兄ちゃんの関係が明確には書かれていませんが、どうもお嫁さんとは別の人にお兄ちゃんが産ませた子どものようです。主人公の心情は直接には描かれていないのですが「お兄ちゃんが使ってたみたいな」筆箱を大切に使い続けていることから、お兄ちゃんに対して恨みに思っているわけでもないようです。むしろ、お兄ちゃんの生活を大切にしなければいけないという気持ちの方が覗えます。血の繋がりがどうであれ、現在の幸せを壊すことを望んでいないのでしょう。そのあたりの微妙なニュアンスが、書かれずとも匂ってくる味のある作品です。ある意味、日本文学の保守本流のような気もします。
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