紫陽花

紫陽花

の★

(一次予選得点:31)

 心安らぐ物語を書かせたら本当にこの作者はうまいですね。新幹線と田んぼがノートの文字が読めるほど近い場所というのが思い浮かばないのですが、こんど乗ったら見てみましょう。雨の中で黙々と田の草取りをする男と、何をすることも無く椅子に掛けているだけの主人公の、居心地が悪そうな連帯感。決して言葉を交わすことはないであろう他人との気持ちの繋がりが、暖かくそしてすこし空しく描かれた秀作です。梅雨の空のように、やや憂鬱な雰囲気を持っています。