へその緒

へその緒

藤次

(一次予選得点:27.5)

 実際に父親がいるかどうかは別にして、心理的には母だけが家族といえる主人公の心情がうまく描けた作品です。母親と臍帯で結ばれた胎児のように断ちがたい繋がりを持ち続けています。これから彼がどう生きるかは分からないのですが、読者に明るい読後感を与えてくれる作品です。
 冒頭から地口で繋ぐ手法は、勝抜きで使う人が多い割りにうまく行っていません。その点、この作品は過不足無く状況を説明しながら、心情の描写にも成功しています。短い中にうまく心情の揺れが表現されている秀作です。