春の季節
高島朝也
軽いジョギングの道中という短い時間の心情の移り変わりを表現した作品です。明確には書かれていませんが、主人公はまだ一人身の、しかしながら太りはじめるほどの年齢に達してしまった男性のようです。とりあえず、彼は「少しほっとしながら、前を見ながら下り坂をのんびりとかけていった」訳ですが、説明が不足しているように思えます。もう少し、彼の現在の生活や心情について説明されていてもよいのではありませんか。
文章や単語の使い方にも雑なところが見られます。例えば「そして、足下の道路の白線を追っていると、昔も走っていた道路の白線を思い出し、そして自然とそのころのことが思い出されてくる」という文は無駄な重複が多く意味も曖昧です。「昔も走っていた」というのは、今走っている道路を昔も走っていたということなのでしょうか。それなら「足下の白線を追っていると、この道を毎日のように走っていた頃のことが思い出されてくる」とすれば十分でしょう。そうでなくて別の道を同じように走っていたなら「足下の白線を追っているうちに、昔に走ったあの道の白線が思い出される。そのころのあれこれが蘇る」ではいかがでしょう。他にも「ぼっとしていた自分からちょっと我に返ってバカなことを考えているのに気づく」という文も整理が必要でしょう。
味わいのある作品世界を作っているのですから、より丁寧で分かりやすい記述をして欲しいところです。
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