魔都
の★
いつもながら、達者な文章です。かつての諜報活動の舞台、上海をそつなく描写しています。やや日本の諜報組織や諜報員の描写がステロタイプな感じもするのですが、これはこれでいいのかもしれません。退廃と危険と恋と夢が渾然とした魔都を、バランスよく作品に仕立てています。「銃を構えて立って」いた春麗とは別の、彼が「満州へ連れて行ってあげる」約束をした春麗を、大切に心にとどめる主人公の心情が羨ましくもあります。
出来れば、今までに描かれていない形で上海を描いてほしかったところですが、なかなか千字では難しいかもしれません。
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