大阪サンタ
Puresilver
広島さんと呼ばれる一人の老人のクリスマスを丁寧に描いた作品です。前半が子どもたちとの会話、後半がベンチの男との会話です。幸せな家庭に暮らす子どもたちや、恋愛をしている男と対比する形で、たった一人で過ごすクリスマスの寂しさが強調されます。
文章が未整理で読みづらいのが残念です。例えば、
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サンタは杖を突き、よいしょ、立ち上がった。
「君、あのマンションの窓の人を待ってるんだろう」
隣のベンチの男が振り向いた。
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の部分は、どちらの発言かが分かりにくくなっています。また、「あのマンションの窓の人」という言い回しはこなれていません。「あの」が「マンション」「窓」「人」のどれにかかっているのかが分かりません。「あのマンション」ではどの窓でも良いことになってしまいます。「あの窓」ではサンタが窓を指差しでもしない限りどの窓か分かりません。「あの人」ではその姿が見えていなくてはいけません。「あのマンションの三階の右から三番目の窓の部屋に住む人」といったニュアンスで書いたのでしょうが、そうなってはいません。「神様」もそうでしたが、読者にとってより分かりやすい表現を選んで欲しいところです。
作品中で明確に書かれてはいませんが、広島サンタはこのあと大阪サンタになるのでしょうか。その辺りの心情が細やかに描かれていればと思います。
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