河想

河想

湖南

(一次予選得点:23)

 それぞれの文自体は意味するところが明確なのに、全体として何が言いたいのかが分かり難い作品だと思います。死体が流れてきたと述べること自体は別に構わないのですが、それが男なのか女なのか、幾つくらいなのか、溺死体なのか、まったく描写がされていません。観念としての死体が流れてきているのです。それならば、鴨川の水面に浮かぶ幻想として死体を引きずり出してみせることもないように思えます。二回も繰り返している「これではまるで私が」を言いたいがために持ってきたように思われてしまいます。思わせぶりではあるのですが、読者には十分な説明がないため最後の「何だか酷く妻が恋しくなった」が唐突な感じを与えます。
 文の表記にも特徴が見られますが、この書き方が何らかの効果を挙げているかといえば、疑問です。必要がないなら、一般的な書法に従った方が、読者には読みやすいのではないでしょうか。