ワンワン
梅松
(一次予選得点:25.5)
とても惜しい作品だと思います。読者が、親切に読取ろうとする限りにおいては主題が明確に伝わるものの、そこまで親切でない読者には何の面白味もない作品になっているように思えます。そういった作品を否定するものではないのですが、どうしても理屈っぽい作品に思われがちです。作品の構成が、がっしりした石造りの構造物のように緻密で安定感があるだけに、もったいないと思いました。
自分に都合のいい生き方を選んでいく柔軟な老人が初めのうちは中心に描かれているのですが、最後には娼婦の視点に擦り替わっています。ここは、もっと若い娼婦の視点を大切にした方が、読者にはわかりやすい作品になったと思います。今のままでは、娼婦の笑いについて十分に突っ込んだ分析ができていません。この笑いは、本当に愉快な笑いではありえないと思うのですが、いかがでしょうか。
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