悪人-約束-

悪人-約束-

鹿野 まどか

 人は、相手が愛してくれるから愛することができるのか、自分が愛するから相手が応えてくれるのか。なかなかに、ありそうな話です。主人公は自分の描く人間関係の中で相手の行動を期待し、相手はまた自分の中での主人公の重みにしたがって行動する。短い中に微妙な関係をうまく描いています。
 最後の部分は、もう少し心情を象徴的に描くことで、説得力が増すかもしれません。「彼女を私の中から閉め出し、廃棄した」と明確に言い切るのもまた新鮮なのですが、読者が取り残されるようにも思えます。どちらかといえば「まあ、大人気ない」と引いてしまうように思えます。読者が自分のこととして物語にのめり込めるような描写が期待されます。