暗室
の★
(一次予選得点:22.5)
構成に凝った作品です。暗室の中での作業に重ねて、過去の出来事が語られます。惜しむらくは、最後の部分が暗室の外、それも翌日になっていることです。暗室の中の独特の雰囲気を生かして欲しいところです。そのために、フォトグラファーでありながらもリバーサルを使っていないのだと思っていたので、残念です。
それと、叙述の順番からいって、昔の事情が第一章でほぼ読者に分かってしまうのは、自ら難しい道を選んでいるように思えます。最後の最後に事情が分かるという構成にしてしまえば、そのからくりだけで作品が成立するところを、あえて、先に種明かしをしてその心情描写や、いくつかのメタファの提示で勝負しようとしています。その心意気はいいと思うのですが、今一つ成功していないようにも思われます。
そうしたことをさておいても、筆力のある、丁寧な作品だと感心いたしました。
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