入道雲

入道雲

藤次

(一次予選得点:22.5)

 青年期特有の、自分の感性から脱することのできない性質が、短いエピソードの中に描かれています。この時期には、感性や生理的感覚といった、論理的には説明しがたいものを唯一の拠り所としがちです。自分の行動の規範を何に求めるのか、しっかりと捉えることができないとき、いい逃げ道になるからです。主人公は、そのことを十分に知っていて「そんな卑怯な考え」と言っているのでしょうか。
 それでもやはり、主人公はゆうこと一緒に、夏の力強い入道雲を抱きしめに、海の果てまで駆けていきたいと願うのでしょう。