この空を飛べたら
黒木りえ
(一次予選得点:23)
深い悲しみを感じさせる作品です。主人公の淡々とした語り口の一方に、自己不全感が漂っています。空を飛びたいけれど、飛ぶことができない。それは、自分に飛ぶ能力が無いのではなく、練習不足なだけなのだ。そう思いながら、いつか飛ぶことのできる日を夢に見る。劣等感と万能感。感情の激しい揺れ動きが、自分というものを捉え切れない悩みをの中で、うまく表現できているように思いました。
この作者の作品には、こうした確信犯的な手法の作品が多いように思います。もう少し、読者に親切になるのも手なのですが、持ち味でもあるし。どうすべきか、悩ましいところです。
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