二個の林檎

二個の林檎

梅松

(一次予選得点:23.5)

 いかにも演劇的なお話です。舞台で上演してみたくなるような、寓話に仕上がっています。誰かの役に立つことで、命を終える。言い換えるなら、自らの生命が尽きるとき、代りに誰かの命に宿る。それが生きる意味だと林檎は考えたのでしょう。この人生観自体は、存在理由の定義が再帰的になってしまっているようにも思えるのですが、ひとつの見解としては成り立つと思います。
 物語の進め方は、青い林檎の視点で進んでいたものが、途中で赤い林檎の視点に変わっています。タイトルが「二個の林檎」ですから、構わないようにも思えますが、やはりもう少し明確に切り替えを示すか、一方の視点で描きとおした方が読者により明確なイメージを与えられたのではないかと思います。