夢の夢
cren
作品にストーリーらしきものはあるものの、実際のところ独白で占められた作品です。例えば、寒い夜に主人公がお茶を買い、それを飲みながら歩きだすのですが、それはただそれだけの説明に終っています。本来ならば、生きた人間としての主人公は、お茶の温度を感じるだろうし、それによって気持ちに変化が生じるものです。しかし、主人公は同じ調子で考え事をしているわけです。なにか、実際の思索が部屋の中だけで行われて、描かれている行動は付け足しのようです。タイトルは「夢の夢」ですが、それは現実感が無いということではないと思います。
一本調子で独白をするよりは、心の揺れの中で自分なりの結末をみつけることが、最後の「僕を励ますかのように冬のオリオンが見下ろしていた」を活かすことになると思います。心境の変化が無いままでは、初めの描写と齟齬を感じてしまいます。
|