別れ

別れ

徳生洋樹

 猫のメルが長い放浪の末に、飼い主たちの元に帰ってくる話、と書くといかにも陳腐な物語ですが、再会の場面が丁寧に書かれていて、うまく纏まっています。小説に、小さな動物と子どもを出すのはある種の反則かもしれませんが、嫌みを感じさせない作品に仕上がっていました。最後の部分でメルの精神が肉体を離れて駆け出す部分は作者も工夫をしたのだと思います。しかしながら、その辺りは読者には分かりにくい描写になってしまったようにも思えます。
 時間の表現を猫風にしてみたり、途中に回想を挟むなどいろいろと企みは見えるのですが、空回りした部分が多いようです。