ゴキブリの死骸
尾池 かわず
(一次予選得点:24.5)
「それは本当に僅かな、ごく僅かな違いにしかすぎない」と言っているわりには、この作品自体が、そこにこだわって書かれた作品のようです。死体の見つからないゴキブリには「彼らに悲しい鳴き声と悲痛をあらわす触覚の動きを要求する」だけの重みのある死がある。さて、死体が発見される自分の死にそれだけの重みがあるのか。人が死を択ぶときは、それがどういう意図であるにせよ、きわめて利己的な判断にもとづくことが多いように思います。自分の信念に従うからこそ行動が出来るのです。
自殺が成功すると、自分はその結末を確かめることが出来ません。一番気になるのは死んだ後のことなのに、それは絶対に見ることができないのです。自殺者の心残りは、まさにそのことなのかもしれません。
それから、作品とは離れて疑問なのですが、硼酸は神経毒なので(視神経が麻痺してきた)ゴキブリは明るいところで死ぬようにも思えるのですが実際はどうなのでしょう。人間のような瞳孔拡散の効果があるとは思えませんので。節足動物に詳しい方はお知らせください。
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