プランツ
瑕瑾(かきん)
千字の限界を感じる作品です。この作品は、第二次世界大戦のドイツ(またはオーストリアかズデーデンあたり)におけるユダヤ人迫害を描いているのだろうと推測されます。だとすれば、その実状にあまり詳しくない日本人読者を意識した作品ならば、状況を十分に説明しておかねばならないでしょう。一方、その状況を説明するだけなら、過去の歴史書を示せばよいのであって、小説としての意味を持たせるには、何らかの新しい視点や発見などが期待されます。あるいはそれを単なる舞台装置とした物語が展開されてもかまいません。
しかしながら、この作品はそのどの方向からも十分に書ききれているとは言えません。千字の物語の読者にとって何が自明で、何が分からないことか、思い切りの難しさが出てしまったように思われます。すっぱりとどちらかに割り切った方が良かったのではないでしょうか。
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