沈丁花

沈丁花

恵子

 古い作風の感傷的な作品といえばいえるのですが、それでなお主人公の気持ちがうまく表現できた作品だと思います。シチュエーションも沈丁花への感慨もパターン通りなのですが、掃除の順番やその他の雑事を事細かに並べ立てるうまさを感じます。生活感覚が丁寧に切り取られており、そういう点ではスケッチとしての掌編小説が成立しています。また、五感に訴える丁寧な描写も良いと思います。さらに進んで新鮮な視点を提供できれば、一段上の作品になるのではと期待させます。