ビリジアン
日高睡足
生きてきた道筋を辿りながら(これが川の上流への旅)、自分というものの本質を突き詰めようとする主人公が描かれています。絵の具箱でただ一つカタカナで書かれていた色「ビリジアン」に自分を重ねあわせています。「何だか目立たなくて」と言ってはいますが、実のところ密林のような濃密な緑色は、社会で必要以上に目立ってきたことでしょう。そうした苦しみの源泉である差異を、自分自身として肯定することができたとき、主人公は過去を取り戻せるのだと思います。
個人的には、やはりビリジアンは「川の色がおかしい…」と言われても、受け入れづらい色合いでした。幻想的光景を描き出しているのでしょうが、どうもセントパトリックデイの印象が拭えませんでした。
|