金魚売りの夏

金魚売りの夏

薗田慎平

(一次予選得点:24)

 日本中が貧しく、悲しい思い出を持っていた頃がうまく描かれています。金魚売りの男もきっと光男のように悲しい思い出を持っているのでしょう。だからこそ、金魚のさみしさが分かり、優しくなれる。誰もが悲しくて、誰もが優しくなれた時代が短い中に表現されています。最後の入道雲に希望を感じることができました。
 細かな部分では「油蝉のけたたましい鳴き声」にはやや違和感を覚えました。「けたたまし」は「俄かにやかましい」ことですから、「ジージー」粘りつくように鳴く油蝉には不似合いではないでしょうか。