境界

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柏木雅博

(一次予選得点:26)

 何かの説明文や研究レポートの鉄則として「結論は初めに」というのがありますが、小説でこれを行なうのはなかなか難しいものです。小説は落語・手品といった演芸の様なものですから、結末が分かっていては客の感心をひきつけにくいものです。この作品では、最初の段落で作品自体がほぼ語り尽くされており、以降は単に繰り返しになっています。極論すれば、初めの段落さえあれば以降はいらないのであって、千字の制限を考えるともったいない限りです。
 最後の会話は田中夫妻のものでしょうか。田中さんと斎藤さんの会話のようにもとれて、今一つ感情を移入できませんでした。文章のメリハリや、表現の丁寧さがあればと思います。