レクイエム
大石 水城
生まれてすぐに死んでしまった姉を心に抱えながら生きてゆくお話です。自分の存在の意義の幾ばくかを姉に求めています。ただそれだけのことが千字にわたって述べられているのですが、読者にそのことが伝えきれていないのが残念です。書かれていること自体は平明なのですが、抽象的にすぎ、主人公の葛藤やその克服が自分のことのようには捉えることができません。こうした個人の内面での物語は、読者にはとらえにくいものですから、より丁寧で一般的な表現を工夫したいところです。主人公が姉を想うだけの優しさを読者に期待するのは無理ですから、その部分を補うことが必要です。
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