遺言
伊藤奈奈
「武田信玄だねえ」と初めの部分を読んですぐにそう思いました。それが狙いなのか、それともオチなのか判然としない作品ですが、どうなのでしょう。オチにしたいなら、もうすこし伏線に工夫があってもよいように思います。裏山に埋めてしまうのもいかにも見つかりますよと言っているようなものです。お約束の設定を使うのは悪いことではないのですが、その場合にはできるだけ約束と違う結末を用意するべきだと思います。
この作品は、わざわざ事件にすることを狙った祖父の企みだったという方向に持っていった方が良かったかもしれません。そしてその企みのおかげで、主人公が幸福になるという考え抜かれた祖父の愛情が描ければと思います。なぜ事件になることが主人公の幸せに繋がるかといえば……。それはまた別の機会があれば。
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