覆面会議

覆面会議

日高睡足

(一次予選得点:18.5)

 一見、作者は、覆面をとって話すことの素晴らしさを述べているように見えるのですが、そんなに単純なものでもなさそうです。このさき、議論が生産的なものになっていったと作者が暗示しているわけではありません。もしかしたら、A氏の傲慢により会議自体が成立しなくなってしまうという可能性をも視野に入れているように思われます。
 顔を晒すことの不利益は当然ながら弱者により重いものです。素顔を晒しても構わない人がそうでない人にそれを強要したとしたら、あるいは会議の方向をそちらに誘導したらどうなるか、そうしたことをも考えさせようとしているのかもしれません。
 ただ、そうしたことがはっきりとは書かれていません。
 わたしは、途中まで読んで「覆面を取ったA氏の顔が覆面でないと誰が言えるのか」、とか「取ったらそこにはオートマトンが現れた」といった展開を期待してしまいました。それよりも、A氏が韜々と自説を披瀝するこの結末は、挑発的に思えました。できれば作者のスタンスを明確に示して欲しかったところです。