ジョグダイヤルの孤独

ジョグダイヤルの孤独

しまだ

(一次予選得点:20)

 日常で出会いそうな光景を、丁寧に描いた作品です。場面を絞り、しっかりと書かれていると感じました。隣に座った女性が、遊び呆けたコギャルや浮ついた女子大生でなく、やけに地味目の設定になっているあたりが、上手いと思いました。不器用な印象がストーリーを助けています。中央線快速の停車駅はあまり詳しくないのですが、時間経過が分かる描写をもう少し入れても良かったように思えます。また「中途半端な時刻」では何時ぐらいなのか、今一つ分かりません。静かに続いていく情景がこの作品の持ち味だと思うので、それを想像させる要素をもっとふんだんに盛り込んであればと、残念です。作者にとって、当然見えている光景が、必ずしも読者には見えていないことがあります。予備知識無しで読み返すことは難しいのですが、それが必要なように思われました。
 細かなことを言わせてもらうなら、特別な理由がなければ「宿を借りれる」は「宿を借りられる」または「宿を借りることのできる」が良いと思います。また「ため息一つつかづ」は「ため息一つつかず」が良いでしょう。