お銀様
紺詠志
(一次予選得点:23)
ある意味で完成された作品です。謎解きの形を取りながら、なかなか読者に見破らせない展開です。お銀様の正体や科学的説明は全くないものの、それでいて読者を納得させることができています。お銀様の最終目的があまりにもセコいという見方もあるでしょうが、大阪や京都の人間の執念は、確かにこのくらいのことをしそうです。
この作品では、異変とはそれ自体が異常なのではなくいつもと何かが違うことである、ということを、あらためて教えてくれます。そして、正体が知れないものには往々にして恐怖か服従(あるいは畏怖)でしか対応できないのだということも。ストーリーそのものの完成度に加えて、こうしたことをも含んだ奥行きのある作品だと思います。
細かなところでは「正月元旦」は「元旦」で十分でしょう。
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